角川ゲームスの島根舞台アドベンチャー、第一弾
2016年に発売されたアドベンチャーゲーム、「ルートレター」。発売前は販促もかなり行われ話題になり、発売後はちょっと(かなり)アレな感じで話題になりました。
その後、完全版「ラストアンサー」が発売となり、steam移植版も販売されています。steamは結構な頻度でセールもされているので、かなりプレイしやすい環境となりました。改めて、このゲームがどんなものだったのかを振り返ってみます。
※ネタバレを含むのでご注意ください
全体的に高レベルな印象の作品
悪評がそれなりに有名となってしまっている本作ですが、実際にプレイすると、かなり丁寧に作られている印象を受けるかと思います。
例えば背景、BGMなどの素材はさすが大手、一級品の高レベルです。箕星太朗氏のキャラデザも素晴らしいですし、松江市を中心とした島根県の実在スポットへのフォーカスも旅行意欲を沸かせてくれます。また、山寺宏一/日髙のり子/井上喜久子をはじめとする豪華声優陣の演技も素晴らしい。
……つまり、作品全体としては出来の良いビジュアルノベルなんですよね。実際、発売後に微妙な意見が出ていたのはシナリオ部分だったかと思います。(なお「ラストアンサー」ではキャラクターの実写化も選択できますが、そちらについてはノーコメント)
肝心のシナリオ
アドベンチャー(ノベル)というゲームの特性上、シナリオがかなり重要になるのは言うまでもないことです。そして、そのシナリオに少し問題があったため、本作は(悪い意味で)話題に挙がったのでした。
物語の概要は、主人公が高校時代(15年前)に文通していた少女を探しに島根へ向かう、というもの。これがなぜそこまで話題になったのでしょうか。
不快な主人公
よく言われるのは「主人公の言動が不快」ということ。これはもう、正直その通り。
過去の出来事を語りたがらない文通相手の同級生に対し、主人公が行ったのはほとんど「脅迫」。ゲーム上の展開とはいえ、30歳を超えたいい大人が他人へ脅迫行為を重ねていくのは実際あまり擁護できないところ。
主人公の熱血ぷりを強調したかったのかもしれませんが、プレイヤーからしても「やたら怒鳴って脅迫している反グレに近い中年」というイメージになり、お世辞にも好感は抱けませんでした。
文通相手の同級生たち
主人公は文通相手を探すため、上記のとおり文通相手の同級生に聞き取りをすることになります。当時の文通の中で彼らの話題が触れられていたためですが、彼らの高校当時のあだ名は「メガネ」、「サル」、「デブ」、「ビッチ」、「ガリ」、「チビ」、「親友」。
……半分以上はあだ名というか悪口では? さすがにもう少しまともなあだ名にしてもよかったのではないでしょうか。なぜこんなことに。
また、彼らは(一部ルートの一部を除き)真面目に暮らしているので、主人公の異常さがまた際立つ結果ともなっています。
マルチエンディング
本作はマルチエンディングです。それも、いわゆる「Good/Bad」分岐ではなく、全く違う展開(世界観)に変化するタイプ。「かまいたちの夜」における別ルート、みたいな感じ。
それは別に問題ないのですが、物語の分岐がかなり後半のため、ルートによってはかなり強引な急展開となるパターンもあります。このあたり、ちょっと中途半端になっているように思えました。
このパターンで作るなら分岐(あるいは伏線)は物語中盤くらいから入れて欲しいですし、そもそも「このルート必要か?」というシナリオも正直ありました。メインストーリーを軸にしてエンディングの差分+エクストラ(おまけ)で別世界観ルート、というくらいの落としどころで丁度良かったのでは。
まとめ
全体的なレベルは高いものの、主にシナリオ面の暴走で少し残念な仕上がりになってしまった印象です。とはいえ、松江市の販促という意味での魅力は伝わったので、必ずしも悪い部分ばかりではないかと思います。
なお、本作の続編的な島根ミステリーシリーズ第二弾として「Root Film/ルートフィルム」が発売されていますが、こちらは秀作な正統派ミステリーアドベンチャー。こちらの感想もまた書いてみます。
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